「点」と「面」で考える空間づくり

先日訪れた劇場で、ふと目についた「とあるもの」。このことから、空間をつくる上で大切な視点を考えてみました。
favvy 2023.05.25
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数年前に訪れたニューヨークのメトロポリタン歌劇場。素晴らしいファサードから見えるシャガールの作品が圧巻でした。

数年前に訪れたニューヨークのメトロポリタン歌劇場。素晴らしいファサードから見えるシャガールの作品が圧巻でした。

今回は外出先でふと目にしたものをきっかけに考えた「空間づくりにおいて大切なこと」がテーマです。

なぜそこにあるのか・・・

先日、とある演劇を観に行きました。その演劇はファッションがテーマだったので、いつもよりちょっとおしゃれをして、わくわくした気持ちで会場へ。チケットを受付で見せていざ会場内に入ると、目に飛び込んできたものはなんと・・・

ダンボールでした。

こちらがその光景です…。会場を名指しする意図は無いので、場所を特定し辛いようにトリミングしています。全体像がわかりにくい写真になっていますがご了承ください。

こちらがその光景です…。会場を名指しする意図は無いので、場所を特定し辛いようにトリミングしています。全体像がわかりにくい写真になっていますがご了承ください。

この写真は、会場入ってすぐのところにあったVIPチケット購入者用の特典引換場所。いかにもオフィスといった感じの長机の周りにこのダンボール。VIPの意味とは・・・。その他、グッズ売り場などのゾーンも、オフィスでよく見る殺風景なパーテーションや、ペラペラの貼り紙などが使われていて、チープな印象を抱いてしまいました。鑑賞前後の雰囲気(ムード)を大事にしたい私にとっては、少し残念な光景だったのです。

今回に限らず、日本の演劇やクラシックの会場では、グッズやCDの販売コーナーが即席感のあるつくりだったり、やたら貼り紙やチラシが多かったりするのも、前々から残念に思っていました。せっかく会場やショーが素晴らしいのにもったいないなあ…と。

また海外との比較かよ、と思われる方もいるかもしれませんが(汗)、私がこれまで行ってきた海外の劇場では、日本で見られるような安っぽいエリアはほとんど見られず、ショー前後で「現実に引き戻された」と興醒めするような経験はありませんでした。

こちらはブロードウェイのとある劇場の中。チケット売り場がレトロでかわいい(写真がブレていてすみません)。日本のように即席のグッズ売り場がある劇場もありますが、冒頭の写真のような、明らかにオフィス什器っぽい長机や、ダンボール山積みという光景はあまり見られません。

こちらはブロードウェイのとある劇場の中。チケット売り場がレトロでかわいい(写真がブレていてすみません)。日本のように即席のグッズ売り場がある劇場もありますが、冒頭の写真のような、明らかにオフィス什器っぽい長机や、ダンボール山積みという光景はあまり見られません。

もし自分が劇場の担当者だったら、少なくとも観客から見える場所に使い古しのダンボールを置くことはないと思います。これがドームなどの大規模なライブや、カジュアルなイベントだったらそこまで気にならないかもしれませんが、ドレスアップして楽しむようなショー、かつ、都心の綺麗な劇場ということ考慮すると、最低限、ショーや劇場の世界観を崩さない配慮は必要だと思います。

私自身も、仕事で会場づくりをしたことが何度もあるのですが、おしゃれとは関係ない金融業界のイベントでさえも、お客様の目に触れるワゴンには布を被せるなど、出来る限り見栄えに気を配っていました(私だけではなく、当時のスタッフ全員の認識)。ですので、なおさら劇場のような夢を提供する場所で、最低限の見た目の配慮がなされていないことに残念な気持ちを抱いてしまったのです。

もしかすると、会場装飾の予算が無いなどの事情があるのかもしれません。でも、少なくともダンボールを隠すことくらいお金はかからないはず。見た目に気を配ることに、多額の費用は必要ないと思うのです。

木を見て森を見ず

このような光景を目にしたときに思い浮かぶことは、物事を「点」で捉えるか「面」で捉えるか、ということです。例えば、「劇場でショーを鑑賞する体験」について、ショーというコンテンツが何よりも大事なのは誰も異存ないと思います。このコンテンツは言い換えると「点」。この「点」のクオリティによって、鑑賞体験は大きく左右されます。しかし、鑑賞という行為をもっと広い目で見ると、その日着る洋服を考えたり、前後のランチやディナーの予定を立てたり、ショーという「点」のイベントを中心として、その日1日の過ごし方という「面」が見えてきます。

その中で特に体験の質を左右するのは、鑑賞する場所の雰囲気。いくらショー自体が素晴らしくても、例えば劇場がいまにも崩れそうなぼろぼろな状態であればどうでしょうか。少なくとも、おしゃれをして観に行くような演目の場合は、そのムードは半減するでしょう。「点」は素晴らしかったけれど、体験の全体像である「面」はイマイチ。すなわち、「木を見て森を見ず」の状態になってしまいます。

ディズニーの完璧な世界観

10代の頃にディズニーシーに行った際、今でも鮮烈に覚えている光景があります。

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続きは、3213文字あります。
  • 実は目的に逆行しているかも
  • 自分の家こそ「面」で考えよう

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